お知らせ

外国人からの資料請求

都心にあるA社のオフィスにて。ちなみに、A社は化粧品の販売会社で、山田君と井上君は代理店募集チームに所属しています。

山田君「わが社のウェブサイトを見て資料請求をしてきたこの人、外国人だって。外国人って日本語ができないかもしれないし、資料なんて送らなくてもいいよね。」

井上君「え、でも外国人だからって、日本語ができないわけじゃないかもよ。ちょっとメールを見せて。ほら、きちんとした日本語で請求してきてるよ。」

山田君「誰かに書いてもらったんじゃない? いずれにしても、外国人を代理店にするわけにはいかないよ。」

井上君「外国人だという理由だけで、門前払いっていうのはどうなのかな。」

山田君「だって、わが社が誰と代理店契約を結ぶかは自由だろ。資料を送るんだって、タダじゃないんだ。無駄なカネは使うなって、社長が言ってたよね。」

井上君「なるほど・・・。」

井上君、ガンバって! 外国人だという理由だけで資料を送らないことには、法的リスクがあります。
中古車販売の加盟店募集をインターネットで呼びかけ、資料請求があれば送付することとしていた株式会社が、請求した人が外国籍だという理由でだけで送付しなかったケースで、裁判所は会社の対応を違法として、20万円の慰謝料の支払いを命じました(大阪地方裁判所平成29年8月25日判決)。
裁判所は、会社が誰と加盟店契約を結ぶかが自由であるし、資料を送らなかったからといって直ちに違法になるわけではないと認める一方で、会社がウェブサイトを利用して広く加盟店募集を行っており、それを見た人が請求すれば当然資料が送られてくるという合理的期待を抱くことは当然だと判示しました。そして、外国籍が直ちに加盟店としての営業に支障になるとは認めがたく、会社の対応は合理的とはいえないと判断したのでした。
一般に私企業には営業の自由があり、誰をビジネスパートナーとするかについて、国が口を差し挟むべきではありません。しかし、社会的に許容できない不合理な差別となりますと、違法となる余地があります。何が社会的に許容できないかという線引きは必ずしも容易ではありませんが、現在の裁判実務に照らしますと、国籍だけで差別をするのはなかなか正当化しにくいというのが実情です。