法律情報コラム(個人)
破産手続で、債権者がどのような立場になるのか説明します。
日常生活で、例えば、コンビニで商品を購入した場合、お店は代金支払債権、お客は商品引渡債権を有します。アパート賃貸では、大家は賃借人に賃料支払債権を、賃借人は大家に目的物の使用収益債権を有します。その他、日常の取引で様々な債権が日々、発生し、我々の生活がなりたっています。
破産法では、その第四章に「破産債権」、第五章に「財団債権」という章立てがあります。しかし、これは代金支払債権、商品引渡債権といった債権が、破産手続内でどう取扱われるかによる分類であって、「破産債権」、「財団債権」という特別な債権が発生するわけではありません。
日常取引で発生している債権が、破産手続内でどのように取り扱われるかは当該債権が「破産債権」、「財団債権」のいずれであるかにより決まってきます。
ここで、破産法の定義を確認します。
破産債権とは、破産者に対して破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権(破産法第97条各号に掲げる債権を含む。)であって、財団債権に該当しないものと定義されています(破産法第2条5項)。他方で、財団債権とは破産手続によらないで破産財団から随時弁済を受けることができる債権と定義されています(破産法第2条6項)。そして、財団債権になる債権は、破産法第148条から第150条で列挙されています。
したがって、財団債権は、破産法で特定されており、それに該当しなければ財団債権になりません。財団債権に該当しない債権で、①破産手続開始前の原因で生じていること、②財産上の請求権である場合、破産債権となります。
相談者から「破産開始決定の後にお店で商品を買っても大丈夫か」との質問を受けることがあります。その場合、お店は、破産者に代金支払債権を有することになりますが、破産開始決定後の原因に基づくものなので「破産債権」ではありません。ですので、破産手続きと関係なく売買できます。
破産開始決定前の原因に基づく債権を、恰も破産開始決定後の原因に基づく債権とする偽装は許されませんので、あくまで、普通に破産開始決定後に買い物をし、日常生活をおくることはなんら問題がないというだけです。
破産法で財団債権となるものが決められています。また、財団債権の場合、破産手続によらないで破産財団から随時弁済を受けることが可能とされています。したがって、破産手続内で何か特別な手続きが用意されているわけでもありません。
そのため、破産手続で、債権者がどのような立場かは、破産債権について検討すれば足ります。
次回から破産債権について具体的に検討したいと思います。