法律情報コラム(個人)

店舗兼住居の配偶者居住権

 相続に限りませんが,自宅で商売をしている場合,1階が店舗で2階が住居といった建物で生活をしている案件はままあります。
 このような店舗兼自宅の建物を被相続人が所有し,晩年,配偶者とともに生活をしていたような場合で,被相続人が亡くなった場合に,配偶者居住権がどのように認められるのかですが,店舗を含めた建物全体に配偶者居住権が成立すると考えられています。
 配偶者居住権の要件が配偶者が相続開始時に「建物に居住していた事実」のみを求め,「建物全体を居住の用として利用していた事実」まで求めていないので,このような考え方になります。
 最近,自宅の一部を賃貸して家賃収入を得られる物件が建築されるのを見かけますが,この理屈からすると建物の一部が賃貸物件として第三者に賃借していた場合にも,建物全体について配偶者居住権が成立することになります。ただ,第三者が既に賃借していますので,賃借部分については,賃借人が優先することになります。
 では、その場合の賃料を誰に支払うのかということですが,配偶者居住権の取得により賃料請求権を取得しません。一般には対象建物の所有権を取得した者が賃料請求権を取得することになると思います。