法律情報コラム(個人)

持戻し免除の推定のために,いつまでに建物に居住が必要か?

 近時の民法改正により,居住不動産については特別受益持戻し免除意思が推定されるという原稿を本ページで掲載しました。https://www.kuretakelaw.com/individual/335
 この制度は,亡くなった人物(被相続人)が,配偶者に居住用不動産を生前若しくは死亡時に贈与する場合には,被相続人の意思として,死後,配偶者が生活する場所に困らないように贈与等したもので,遺産分割協議でも,当該居住不動産の取り分を特別受益とされて配偶者が遺産分割で不利益に扱われないよう,持戻しを免除する意思を推定することが目的です(民法903条4項)。
 民法903条第4項で免除推定が及ぶためには,20年以上婚姻関係のある被相続人が配偶者に対して居住不動産を贈与若しくは遺贈している場合であること,配偶者は当該不動産にいつ居住しなければならないのでしょうか? 相続時でしょうか,それとも贈与等の時点でしょうか,それともその予定だけで足りるのでしょうか?
 法律は,婚姻期間は20年以上としておりますが,建物の居住期間を明記しなかったので,贈与又は遺贈を受けた時点で居住していれば足りると考えられます。
 ただ,遺贈は被相続人の死亡時しか可能ではありませんが,贈与の場合,生前複数回可能ですので,この考え方によれば,贈与と転居を繰り返せば,複数の建物に民法903条4項の適用も可能となってしまいます。現状,条文の文理解釈からは,上記解釈になりますが,今後の裁判の動向が気になるところです。