法律情報コラム(個人)
亡くなった人の預貯金は,遺産分割を待たなくては払戻しが受けられないのが原則ですが,平成30年の法改正により,同一の金融機関に関する払い戻しの上限額は150万円(法務省令で定められた金額です)で,預貯金債権のうち相続開始時(亡くなった時)の残高の3分の1の金額に払い戻しを受ける相続人の法定相続分を乗じた金額の払戻しが,遺産分割前にも可能となりました(民法909条の2)。
しかし,上限額以上の支出が必要となった場合に,相続人間で分割協議が整わない限り預貯金に全く手をつけられないという事態は,亡くなった人が事業をやっていて債務の額が大きく,支払期限も迫っている時などに,相続人としては困ります。そこで,平成30年法改正では,このようなニーズに応えるため,預貯金債権の仮分割の仮処分制度を新設し(家事事件手続法200条3項),仮処分が認められない場合として「他の共同相続人の利益を害する時」として要件を緩和することで対応しています。
この仮分割の仮処分では,他の共同相続人への不利益がないかどうかは家庭裁判所の判断に委ねられますが上限枠を撤回する道を一部認めたことになります。