法律情報コラム(個人)

遺産の一部分割

 平成30年民法改正で,遺産の一部のみを分割することを明らかにしました。
 共同相続人は遺産を処分する権利があるので,遺産の一部を他の遺産とは切り離し,切り離された一部の遺産を対象とする分割協議も可能と考えられました。
 また,共同相続人間で遺産の一部分割の協議がまとまらない場合に,家庭裁判所に対して遺産の一部分割を求めることも可能であることも条文で定められました。
 遺産の一部分割により,例えば,共同相続人間で遺産分割について争いがあるのはA・Bという不動産のみで,その他の遺産については争いのない場合,A・B不動産以外の遺産のみを対象とする遺産の一部分割協議を成立させて,残るA・B不動産の遺産分割のみ,共同相続人間で協議が整わないとして家庭裁判所に申立てを行うなどの解決方法も可能となりました。
 遺産の一部分割は,共同相続人間で,遺産分割の対象となる遺産の「範囲」を一部に限定することを可能にする制度ですが,対象を遺産全部とせず,一部に限定することで共同相続人間の公平な分割の実現が阻害されるような場合,遺産の一部分割を認めるのは適当ではありません。
 例えば,共同相続人の一部に生前贈与や特別受益がある場合に,遺産の一部分割を安易に認めると,後日,代償金の支払いが必要になった場合にその弁済資力がないなど,実質的に適正な遺産分割が実現できない可能性は否めません。
 そのため,遺産の一部分割により,他の共同相続人の利益を害する虞がある場合には,一部分割ができないとされています。