法律情報コラム(個人)
養育費とは、未成熟子と離れて住む親が、子に対する扶養義務に基づき、子にかかる費用の一部を支払うものです。
扶養義務は、義務者が自分の生活を保持するのと同程度の生活を被扶養者にも保持させる義務である生活保持義務と、自分の生活を犠牲にしない程度で被扶養者の最低限の生活扶助を行う義務である生活扶助義務に分けられますが、養育費は、前者の生活保持義務として履行されるべきだと考えられています。
日本では9割近くが当事者間の話し合いによる離婚(協議離婚)だと言われていますが、養育費に関する取決めが離婚の条件とされていないため、養育費について何も決めないまま離婚をするケースが多く見られます。離婚後の経済状況は子の福祉に直結する重要な事柄ですので、協議離婚をする場合であってもきちんと取決めをして、公正証書に残すことをお勧めします。
調停離婚や裁判離婚では、双方の収入をベースに家庭裁判所の算定表(http://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/santeihyo.pdf)に基づき支払額を決める実務が定着していますが、算定表はあくまで目安ですので、個別具体的な事情によっては金額の増減があり得ます。
一方で、離婚時に養育費について決めたものの、きちんと履行されないケースも散見されます。養育費について執行許諾文言付きの公正証書が作られている場合や、養育費について定めた調停調書や判決書がある場合は、裁判所に履行勧告や履行命令の発出を求めたり、支払義務者の預貯金や給与などを差し押さえて強制的に支払を実現することができます。なお、平成16年の民事執行法改正により、過去の未払いの養育費だけでなく将来分についても差押ができるようになりました。