法律情報コラム(個人)

破産手続きの選択~破産原因

 債権額が大きく、毎月の支払い金額が確保できないなどで任意整理ができない場合、裁判手続きを利用しての清算を検討します。
その裁判手続きによる清算としては、皆さんに一番馴染みがあるのが破産手続きということになるかと思いますが、破産は「破産原因」がある場合に利用できます。
破産法第15条は、破産原因である「支払不能」を定め、同法16条1項は、法人特有の破産原因である「債務超過」を定めております。

(破産手続開始の原因)
第15条債務者が支払不能にあるときは、裁判所は、第三十条第一項の規定に基づき、申立てにより、決定で、破産手続を開始する。
2債務者が支払を停止したときは、支払不能にあるものと推定する。
(法人の破産手続開始の原因)

第16条債務者が法人である場合に関する前条第一項の規定の適用については、同項中「支払不能」とあるのは、「支払不能又は債務超過(債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態をいう。)」とする。

 破産原因のうち「支払不能」についてですが、これは破産法第2条第11項が定義を設けており、支払不能とは「債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態」をいいます。
 この定義からわかりますとおり、支払不能とは、支払期限に弁済ができなかった事実では足りず、「支払期限に弁済できないことが、どの債権者との関係でも続いていること」に加え、「弁済ができないことが、債務者の支払能力の欠乏に起因している」状態を指すことになります。
ある時、たまたま資金繰りが難しくなり、支払が遅れるようなことがあっても、それだけでは支払不能とはいいませんし、債務者が特定の債権者に対する支払いについて、契約関係に争いがあって継続的に止めても支払不能にはなりません(支払いを止めることが債務不履行になるかは別問題です。)。
 次に、支払能力の欠乏という点ですが、債務者の保有する資産だけで考えるのではなく、信用、労務による収入なども考慮して、支払能力が欠乏していることを判断します。
 この点、法人特有の破産原因である「債務超過」と比較するとイメージがつきやすいかと思いますので、債務超過の説明をすると、債務超過とは、債務者の負債の総額が資産の総額を超える状態をいいます。債務超過になるか否かは、負債総額という金額と、資産をすべて売り切った場合の金額の比較のみで判定されることになります。
 ここからわかるとおり、支払不能は、債務超過とは異なり、資産と負債の対比のみではなく、債務者の信用、労力から今後得られる収入も考慮して、支払を一般的かつ継続的にできないかどうかを考える破産原因であるといえます。

 この「支払不能」に似ている言葉で「支払停止」というものが、破産法第15条2項にあります。これは、債務者が債権者に対する支払を止めた事実を指し、支払停止のみでは破産原因とされず「支払不能」を推定するとされています。