お知らせ
相続法の改正(4)~配偶者短期居住権について~
平成30年の相続法改正により、配偶者居住権とは別に、配偶者短期居住権の制度が新設されました。
配偶者が亡くなった人と同居していた場合、亡くなった直後に居住建物から退去しなければならないのは精神的・経済的に大きな負担であるのは容易に想像できるところでしたが、配偶者がそのまま居住し続ける法的権限を認める規定がありませんでした。そこで、民法改正により、死亡後も引き続き無償で居住できる権利を認めました。
ただ、これは先に説明した配偶者居住権とはまた別の法制度ですので両者を混合しないように注意が必要です。
ア)配偶者短期居住権が認められるためには、配偶者が無償で亡くなった方の財産である建物に居住していることが必要です(1037条第1項)。
イ)配偶者は、法律上の婚姻関係のある配偶者であることが必要です。
ウ)亡くなった方が建物を所有若しくは共有していることが必要です。
エ)配偶者短期居住権は、配偶者が居住建物に遺産として共有持分を保有する場合は、遺産分割による建物の所有権者が確定する日もしくは相続開始から6ヶ月を経過する日のいずれかの遅い日まで認められます。
配偶者が当該建物に遺産共有持分を有していない場合は、居住建物取得者から配偶者短期居住権の消滅の申し入れ日から6ヶ月を経過する日まで認められます(1037条第1項)。
オ)配偶者短期居住権は、居住建物取得者から居住建物を譲り受けた人には主張できません。
しかし、居住建物取得者は、居住建物を譲渡し、配偶者短期居住権の使用を妨げてはいけないとされています(1037条第2項)。
カ)配偶者短期居住権は無償です(1037条第1項)。
キ)配偶者短期居住権が消滅した場合、配偶者は居住建物取得者に居住建物を返還しなければなりません(1040条)。
ク)配偶者短期居住権は、居住建物の使用のみ認められ収益はできません(1038条第1項)。
第二節 配偶者短期居住権
(配偶者短期居住権)
第千三十七条
配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合には、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める日までの間、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の所有権を相続又は遺贈により取得した者(以下この節において「居住建物取得者」という。)に対し、居住建物について無償で使用する権利(居住建物の一部のみを無償で使用していた場合にあっては、その部分について無償で使用する権利。以下この節において「配偶者短期居住権」という。)を有する。ただし、配偶者が、相続開始の時において居住建物に係る配偶者居住権を取得したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し若しくは廃除によってその相続権を失ったときは、この限りでない。
一 居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合 遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から六箇月を経過する日のいずれか遅い日
二 前号に掲げる場合以外の場合 第三項の申入れの日から六箇月を経過する日
2前項本文の場合においては、居住建物取得者は、第三者に対する居住建物の譲渡その他の方法により配偶者の居住建物の使用を妨げてはならない。
3居住建物取得者は、第一項第一号に掲げる場合を除くほか、いつでも配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができる。
(配偶者による使用)
第千三十八条配偶者(配偶者短期居住権を有する配偶者に限る。以下この節において同じ。)は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用をしなければならない。
2配偶者は、居住建物取得者の承諾を得なければ、第三者に居住建物の使用をさせることができない。
3配偶者が前二項の規定に違反したときは、居住建物取得者は、当該配偶者に対する意思表示によって配偶者短期居住権を消滅させることができる。
(配偶者居住権の取得による配偶者短期居住権の消滅)
第千三十九条
配偶者が居住建物に係る配偶者居住権を取得したときは、配偶者短期居住権は、消滅する。
(居住建物の返還等)
第千四十条
1 配偶者は、前条に規定する場合を除き、配偶者短期居住権が消滅したときは、居住建物の返還をしなければならない。ただし、配偶者が居住建物について共有持分を有する場合は、居住建物取得者は、配偶者短期居住権が消滅したことを理由としては、居住建物の返還を求めることができない。
2第五百九十九条第一項及び第二項並びに第六百二十一条の規定は、前項本文の規定により配偶者が相続の開始後に附属させた物がある居住建物又は相続の開始後に生じた損傷がある居住建物の返還をする場合について準用する。
(使用貸借等の規定の準用)
第千四十一条
第五百九十七条第三項、第六百条、第六百十六条の二、第千三十二条第二項、第千三十三条及び第千三十四条の規定は、配偶者短期居住権について準用する。