お知らせ

少数株主の株式買取請求

少数株主の悩み

家族経営の非公開会社の株式を保有している株主の方から、次のような悩みを聞くことがあります。
・親が設立した会社の株式30%を相続しましたが、兄夫婦が経営をしていて、役員にもしてもらえず、配当もしてくれません。
・婚姻中に会社を設立し、夫が51%、私が49%の株式を持っていますが、今般離婚することになったので、会社とも縁を切りたい。

こんなとき、会社に自分の株式を買い取ってもらえるといいですね。株主の側から無条件で会社に株式の買取りを請求できるわけではありませんが、一定の要件を満たせば可能です。ではどのような場合に可能なのでしょうか。ここでは2つの場面を挙げてみます。

① 反対株主の株式買取請求
② 譲渡制限株式の会社による買取り

以下、それぞれについて見ていきましょう。

① 反対株主の株式買取請求

会社が、次のような重要な事項を行おうとするとき、これに反対する株主は会社に対して、「公正な価格」で株式を買い取るよう請求ができます。

会社の重要な方針に賛同できないのに、なお出資を続けなければならないとすれば、株主に酷だからですね。

ア 株式に譲渡制限を設けるなどの定款変更(会社法116条)
イ 端数を生じることとなる株式併合(会社法182条の4)
ウ 事業譲渡等(会社法469条)
エ 吸収合併等(会社法785条、797条)
オ 新設合併等(会社法806条)

以前、当事務所で、冒頭のような悩みのご相談を受けていた矢先、会社が事業の重要な一部の譲渡をすると通知してきたことがありました。ご相談者としては、渡りに船ということで、反対株主として会社に株式買取請求を行いました。

この場合の買取価格である「公正な価格」は、原則は協議で決めることとされていますが、合意ができない場合には、裁判所に決めてもらうことができます(株式買取価格決定申立事件。会社法470条2項)。

このケースでも裁判所に申立てをしたところ、当初会社側の提示した買取価格の数倍の金額に決まりました。塩漬けになっていた株式を、予想外の高額で買い取ってもらうことができ、ご相談者には大変喜んでいただきました。

反対株主からの買取請求の仕組み

② 譲渡制限株式の会社による買取り

株主は株式を自由に譲渡できるのが原則ですが(株式譲渡自由の原則。会社法127条)、株式を第三者に譲渡するには会社の承認を得なければならないという決まりを定款に定めることができます(会社法2条17号)。

会社にとって、見ず知らずの第三者が株主として参入してくることを防ぐためですね。多くの中小の会社ではこのような譲渡制限がかかっています。

しかし、譲渡制限がある場合でも、出資した資本を一切回収できないとすれば株主は困ってしまいます。そこで会社法では、会社は、株主の第三者への株式譲渡を承認しない場合には、自らその株式を買い取るか、参入してきても問題ない者(代表者個人など)を譲受人に指定することができるとされています(会社法140)。

このようにして株式譲渡自由が保障されているわけです。

この仕組みのもとでは、株主は、ともかく株式を買い受けてくれる第三者を探し出すことに成功すれば(これが難しいのですが)、仮にその譲渡が承認されなくても、最終的には会社もしくは会社の指定する者に株式を譲渡できるということになります。

この場合にも、売買価格は原則として協議で決めることとされていますが、合意ができない場合には、裁判所に決めてもらうことができます(株式売買価格決定申立事件。会社法144条2項)。

譲渡制限株式の譲渡承認がない場合の買取請求の仕組み

おわりに

これら株式買取請求の手続は大変複雑で、幾重にも期限が設けられておりますので、注意が必要です。

それぞれの仕組みを分かりやすく図にしたものを掲載しておきましたので、参考にしてください。